というころんそれも
グジは右手でそれを制すと、諭すように言った。「ブツを誰にもばれないように精巧に作る。しかも締め切りが異様に短い。行き先の指定もある。これだけのことでも、これがどれだけ面倒な、そして大変なことなのかわかるbioderma 卸妝水でしょう?」グジは薄笑いを浮かべた。
「私が無理なら子供だけでもいい。金なら出すわ、いくらになるの?」
グジは目安となる金額を言った。「これから増えることはあっても減る事はありません。そして最終的に申し上げる金額からびた一文まかりません。それでご不満なら他所へいってください。引き受けるところがあればのことですがね」グジは薄笑いを浮かべたまま言った。
「ひとでなしめ」エリはこのところ悪態ばかりついている。
エリの一言を受けてグジは薄笑いを収めた。「ただし1人分じゃありません。2人分です。ねえさんの依頼、親方は受けないとは言ってません。ただ条件的に要望に応じられない部分もあるし、困難な作業のコストに見合う報酬を求めているだけです。極めて妥当な値段だと思いますよ?ねえさん」
「どういうこと?」エリは質問した。
「子供1人での移動に際しては、もちろん正規のサービスを利用しますが、万が一を考えて、乗務員のサポートが得られるよう手をまわします。もち込みになっています」
「むう」エリは言葉を飲み込んだ。
「それに」グジはエリの顔を覗きこんだ。「子供を移動させるだけでは、残ったねえさんの立場が非常にやばくなりますよね?」
「わかってる!だから一緒に」
「それは先ほど言った理由で不可能です」グジは言葉を被せる。
「何かいい提案は有るの?」エリはたたみかける。
「ねえさんを安全な場所に匿い、顔を変え、あらためて出国させます。海外に出てしまえば奴らの影響力は非常に限定的な物になりますし、万が一追手がかかっても“血まみれエリ”はもう見つからない」
「それはそうだけど、でも顔を変えるとなると大事ね」
「そうです。 大事になります。あらかじめ言っておきますが、ねえさんには全くの別人になってもらいます。顔も名前も国籍もこちらで選定した人物になりますから、子供と同じ国に行ける可能性は低いと思います。もう会えることは無いかもしれません。もっとも、会っても誰だか分からないでしょうけれど。先ほど言った料金はそこまでを含んだ物だとをお分かりいただけますか?」
エリは黙り込んだ。グジもそのままの姿勢で黙って待っている。
エリはグジに向けた顔を笑顔に変えた。「そんなに整形外科にツテがあるんだったら、フワリからチップを取り出せるんじゃないかしら?」エリは柔らかいその本来の発音で実名をあげた。
「それについては考慮に入れて、色々と調べてみましたが」グジは努めて冷静な様子で言った。「まずはっきりしていることは、ベント達にはフワリを生かしておくつもりは全く有りません」彼はフワリを硬い音で発音した。「フワリはガウガの娘です。つまり、彼らはこの先ガウガの影響力を残すつもりは全く無い。だから、我々が高度な医療設備をもった病院と医者を紹介することができても、彼等にとってそれは全く余計なお世話だ、ということです。つまり、彼等はフワリの体内に埋め込まれたチップを必要としていますが、フワリには全く興味が無いんです。それどころか彼等にとってフワリは邪魔な存在です。簡単に言えば消えてほしいんです」